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日進市で腎臓内科をお探しならたがやクリニックへ

日進市で腎臓内科をお探しなら当院へ

画像(CKD_腎臓の働き)

腎臓内科を受診するきっかけは、多くの場合、ご自身で「腎臓が悪くなったので病院に来ました」というよりも、以下のようなケースが多いです。

  • 健診で腎機能の項目に異常が見つかった
  • 蛋白尿や潜血尿が指摘された
  • かかりつけの医師から腎機能が悪いと言われた
  • 以前から腎臓が悪いと指摘されており、専門医の診察を勧められた

また、「このぐらいの腎機能なら大丈夫と言われたけど、本当にこのままでいいのか不安」「腎機能が悪いと言われたけど、何かできることはないのか」「腎臓のことをもっと詳しく知りたい、治療したい」と心配される方も多くいらっしゃいます。
そもそも「腎臓が悪い」とはどういうことでしょうか?また、腎臓内科はどのようなことを診ているのでしょうか?まずは、腎臓の働きについてご説明いたします。
腎臓は、体の健康を保つために非常に重要な役割を果たしています。

 老廃物の排出(尿を作り老廃物を排出)

腎臓は血液をろ過し、体内で不要になった老廃物や有害物質を尿として排出します。腎臓内のネフロンという単位がこのろ過作業を行い、余分な水分や塩分、毒素、クレアチニンや尿素窒素といった代謝産物を尿として体外に排出します。この機能により、血液は清潔に保たれ、体内のバランスが維持されます。

 水分・電解質の調節(過剰な水分や電解質を排泄)

腎臓は体内の水分量や電解質(ナトリウム、カリウム、カルシウムなど)のバランスを調節します。必要に応じて水分を再吸収するか、余分な水分を尿として排出します。また、電解質の濃度を適切に保つために、必要な量を再吸収し、過剰なものは排泄します。この調整機能は、血圧の維持や筋肉・神経の正常な機能に重要です。

 ホルモンの産生・代謝(赤血球の生成、骨の調節、血圧の調節)

腎臓はエリスロポエチンというホルモンを分泌し、骨髄での赤血球の生成を促進します。これにより、全身に酸素を運ぶ赤血球の数が維持されます。また、ビタミンDを活性化してカルシウムの吸収を助け、骨の健康を保つ役割も果たします。さらに、腎臓はレニンというホルモンを分泌し、血圧を調節します。
以上のように、腎臓は多くの重要な機能を担っており、これらの働きによって体の状態が正常に保たれています。腎臓は私たちの健康を支える非常に大切な臓器です。
腎臓は急激に機能が低下すること(急性腎障害)もあれば、症状がなく知らない間に進行すること(慢性腎臓病)もあります。腎臓で作られる尿の異常(蛋白尿、ネフローゼ症候群、潜血尿、慢性糸球体腎炎)で気づかれることもあります。また、偶然の画像検査で腎の形態異常(多発性嚢胞腎、片腎、馬蹄腎)が発見されることもあります。さらには、貧血(腎性貧血)、骨粗鬆症、高血圧、浮腫、ミネラルバランスの異常などが、実は腎臓病によって引き起こされていることもあります。
腎臓専門医が在籍するクリニックは非常に限られています。当院では、腎臓専門医の目線から、腎障害が今後進行するかどうか、治療法があるか、今の状態でできることが他にないかなどを評価し、患者様に寄り添った腎臓診療を提供します。

急性腎障害と慢性腎臓病

急性腎障害(AKI)

急性腎障害(AKI)は、その名の通り、腎臓の機能が突然低下する状態です。通常、血液をきれいにして尿を作る腎臓が、短期間でその働きを十分に行えなくなります。原因は、脱水、血圧の低下、感染症、自己免疫疾患、薬の副作用などさまざまです。腎臓は、悪くなっても症状が出にくい臓器と言われますが、急性腎障害を伴うケースでは、原因による脱水や感染症による倦怠感、ふらつき、発熱などの症状が現れ、病的な状態になることが多いです。さらに、体に有害な物質が溜まったり、水分・電解質のバランスが崩れたりします。放置すると生命予後に関わる状態に陥ることもあります。早期に適切な治療を行えば、多くの場合は回復が期待できますが、一定数の患者さんはAKIから慢性腎臓病(CKD)に移行し、将来に末期腎不全に至り、透析などの腎代替療法が必要となることがあり、AKIの改善後にも長期的なフォローが必要になります。

AKIの原因

AKIの原因は大きく3つのカテゴリーに分類されます。

腎前性:腎臓への血流が低下することで発症します。原因には脱水、出血、低血圧などがあります。外来の患者さんのAKIの原因の約70%はこの腎前性の急性腎障害です。
腎性:腎臓自体に障害がある場合です。急性尿細管壊死、急性間質性腎炎、糸球体腎炎などが原因となります。
腎後性:尿路の閉塞によって尿が排出できず、腎機能が低下する場合です。尿路結石、腫瘍、前立腺肥大などが原因となります。

●画像(AKI_発症場所と成因)

AKI診療の流れ

AKIの診療は、原因を特定し、それに基づいて治療を行うことが基本です。原因の特定には尿検査、腎臓の画像の検査、病歴聴取が必要で、新しい薬剤やサプリメントの有無、体重や血圧の推移の情報は診断・病態の把握のため重要です。AKIの原因の精査の前に、治療に抵抗性の電解質異常、代謝性アシドーシス、尿毒症症状、または体液過剰がある場合、緊急透析が考慮され、透析治療が可能な病院に移る必要があります。尿の検査で、腎臓の糸球体とよばれる濾過装置に炎症があることが示唆される蛋白尿・血尿が高度な場合は、さらなる精査として腎臓に針を刺して取れた組織を顕微鏡で確認する「腎生検」が必要です。腎生検は専門の医療機関で入院下で行います。
●画像(AKI_診療アルゴリズム)

AKIの治療

AKIの原因別に治療を行います。

腎前性

脱水や出血に対しては、適切な点滴治療を行い循環動態を回復させます。重症の場合は、血管作動薬を用いて血圧をあげることもありますが、入院施設で行う治療です。

腎性AKI

急性尿細管壊死は支持療法が中心で、腎灌流の改善や腎毒物質を控えて回復を待ちます。
急性間質性腎炎:薬の副作用の場合は原因薬剤の中止が有効で、改善が乏しい場合には、ステロイド療法の検討を行います。
糸球体腎炎:血管炎などにより腎臓に炎症が起きている場合にはステロイドなどの免疫抑制療法の検討を行います。

腎後性AKI

尿路の解除:前立腺肥大や結石による閉塞が原因の場合、カテーテル挿入やより専門的な治療ができる泌尿器科病院での加療が必要になります。

慢性腎臓病(CKD)

健診や病院の検査で「腎機能が悪くなっています」「蛋白尿が出ています」と言われ、腎臓内科への受診を勧められたとき、「腎臓が悪いってどういうこと?」と疑問に思うことが多いのではないでしょうか。
ここでは、「腎臓が悪い」≒「腎機能障害」≒「慢性腎臓病(CKD)」について解説します。
慢性腎臓病(CKD)は、心血管疾患や寿命に関わる重要な疾患であり、2002年に提唱された病気の概念です。
CKDとは、腎臓の働きが健康な人の60%以下に低下した状態(GFRが60 ml/分/1.73 m²未満)や、蛋白尿が出るなど腎臓に異常がある状態が3か月以上続くことを指します。
日本の成人の約5人に1人がCKDだと言われており、新たな国民病とも呼ばれています。

CKDの診断基準

●画像(CKD_診断基準)

慢性腎臓病は、腎臓本来の働きが徐々に悪くなってくる状態です。
この3つの検査が大事です。検診でどれかが引っかかったら受診をしてください。

CKDの重症度

原因と腎機能(GFR)と蛋白尿(アルブミン尿)で重症度が決まります。
●画像(CKD_診断基準)

GFRは腎機能の100点満点の点数や残りの従業員数に例えられたりします。
●画像(CKD_診断基準)

CKDの進行

腎機能を保つためにはどうすればいいでしょうか。
腎機能障害の進行に関わる要因は様々でそれらが複雑に絡み合っています。血圧が異常に高い、血糖が高い、蛋白尿が多い、喫煙をしている、肥満である、年をとるだけでも腎機能には影響がでます。こうした腎臓に負担をかける要素を、治療や日常生活の中で管理していくことが大切です。
●画像(CKD_進行)

CKDの症状

症状を自覚したときにはCKDのステージが進行しているケースが多いため腎臓は「沈黙の臓器」と呼ばれることがあります。
腎臓はとても働き者なので、かなり悪くならない限り症状が出ないことが多いです。たとえば、GFR(糸球体濾過量)が30の場合、これは腎機能が百点満点中30点の状態です。もともと100人いた働き手が30人になり、その30人で100人分の仕事をこなしているイメージです。症状は出ていませんが、実際は腎臓に大きな負担がかかっている状態です。
この30点を下回り、10点前後になると、水分や塩分をうまく排出できず、むくみが出たり、体内の毒素が処理できなくなったりします。そうなると、疲れやすくなったり、食欲が落ちたりする尿毒症の症状が現れることがあります。
CKDの症状には個人差があり、また他の臓器の疾患による症状が重なることもあります。

  • むくみ
  • 息苦しさ
  • だるさ
  • 食欲がない
  • 吐き気
  • 皮膚のかゆみ
  • 脈が不整
  • 口臭が匂う

年齢別のCKDの頻度

●画像(CKD_年齢別頻度)

高齢者においては、CKD(慢性腎臓病)の割合が高くなる傾向があります。高齢になると、腎臓の機能は自然な加齢現象によって低下するのが一般的です。また、高齢者は他の慢性疾患や合併症のリスクも高まるため、CKDの管理においては、個別のケースに合わせたアプローチが必要です。単純な画一的な治療プランでは不十分です。
医師、看護師、栄養士、薬剤師など多職種が協力し、生活の質を最大限に向上させるための治療プランを立てることが重要です。

透析導入になった腎疾患の割合

●画像(CKD_透析導入になった腎疾患の割合)

透析導入が必要となる腎疾患の主要な原因の一つは「糖尿病性腎症」です。糖尿病は、高血糖状態が長期間続くことで腎臓の微小血管に損傷を与え、最終的には腎機能を喪失することがあります。糖尿病性腎症による透析の必要性は増加しており、糖尿病の予防と管理が非常に重要です。
また、近年では「高血圧症」が原因となる「腎硬化症」による透析導入の割合が増加しているとの指摘もあります。長期間にわたる高血圧は腎臓の血管に損傷を引き起こし、それが進行すると腎機能が低下し、透析が必要になることがあります。

CKDの治療

●画像(CKD_治療スロープ図)

原因によっては腎機能の改善が期待できる疾患もありますが、一度悪化した腎機能を回復させる、CKDに対する「特効薬」は現時点では存在しません。しかし、腎機能の低下を遅らせることは可能です。そのためには、食事の改善、血圧や血糖値の調整、薬の適切な服用など、さまざまな対策が必要です。ですから、「慢性腎不全だからもう仕方がない」とあきらめず、自分の腎臓を大切にすることが非常に重要です。

  • 血圧の適正化
  • 血糖値の是正
  • 蛋白尿の軽減治療
  • 肥満の是正
  • 生活習慣の修正
  • 食事指導
  • 貧血治療
  • 脱水を避ける
  • 禁煙
  • 適度な運動習慣
  • 腎毒物を避ける
  • 感染症を避ける

CKDの治療は早期発見・早期介入が重要になります。CKDに関して相談したい方は一度受診下さい。

透析について

●画像(CKD_透析)

CKD(慢性腎臓病)が進行し、末期腎不全に至ると一般的には「血液透析」が想像されがちです。しかし、実際にはいくつかの治療オプションがあり、患者さんとの綿密な計画が不可欠です。
一つ目は「血液透析(HD)」です。この治療法は定期的に透析施設で行われ、血液を機械に通して浄化します。効果的な治療ですが、針を使用するため不快感や痛みを伴うことがあります。また、食事や水分摂取に関する制限が必要な場合もあります。
次に「腹膜透析(PD)」があります。この方法は自宅で行えるため、通院の回数が減り、生活の柔軟性が増します。一般的には食事の自由度が高いのが特徴ですが、腹膜カテーテルの埋め込みや感染リスクがあることに留意する必要があります。
三つ目は「腎移植」です。これは他の人から腎臓を提供してもらう方法で、通常は透析から解放され、生活の質が向上します。ただし、ドナーとの適合性の確認が必要であり、免疫抑制薬を服用する必要があります。
愛知県では腹膜透析が他県に比べて普及しており、移植可能施設も多く存在します。
日本では透析治療の質が高く、患者さんの生命予後が世界的に優れています。透析患者さんは多くの場合、工夫をすれば好きなものを食べたり、場所によっては旅行に行ったり、仕事を続けたりすることが可能です。重要なのは、透析治療が最後の手段ではなく、その先の生活に焦点を当て、CKDの初期から介入を行うことです。透析治療に対するマイナスイメージがあるかもしれませんが、日本の透析技術と治療管理の向上により、生活の質を向上させることが可能です。慢性腎臓病の進行期には、専門病院との連携を行い、一緒に最適な治療法を見つけましょう。

このような症状は腎臓病が原因の可能性があります

慢性的な疲労感や倦怠感がある

慢性的な疲労感や倦怠感を感じている場合、腎臓の機能が低下している可能性があります。腎臓は体内の老廃物や余分な水分を排出する重要な役割を果たしていますが、腎臓が弱ると、これらがうまく処理できなくなり、体に毒素がたまりやすくなります。その結果、疲れやすくなったり、だるさを感じることが増えるかもしれません。こういった症状が続く場合は、腎臓の働きに問題があるかもしれませんので、医師に相談することが大切です。

高血圧

血圧が高い状態が続く場合、腎臓病が原因の可能性があります。
腎臓は体内の血液をフィルターのようにして老廃物を取り除き、水分や塩分のバランスを調整しています。しかし、腎臓の働きが悪くなると、血液中の塩分や水分が体に溜まりやすくなり、その結果、血圧が上がることがあります。高血圧が続くと、腎臓の負担がさらに増え、腎機能がさらに悪化するという悪循環に陥ることがあります。
高血圧が長く続いている場合、腎臓の状態を確認することが重要です。放っておかず、早めに医師に相談して腎臓を守る対策を取りましょう。

手足や顔のむくみ

手足や顔のむくみが見られる場合、腎臓の機能が低下しているサインかもしれません。特に、急激なむくみが発生した場合は「ネフローゼ症候群」の可能性もあります。この病気は腎臓のフィルター機能が障害され、大量の蛋白質が尿に漏れ出すことによって、全身にむくみが生じます。
通常、足のむくみ自体で命に関わることはあまりありませんが、むくみが高度になると、胸水(肺の周りに水が溜まる状態)や腹水が出現し、呼吸困難やその他の状態悪化につながるリスクがあります。したがって、むくみが続いたり急激に悪化したりした場合は、早めに医師に相談することが大切です。
また、むくみには種類があり、『圧痕性浮腫』と『非圧痕性浮腫』という分類があります。圧痕性浮腫では、指で押すとむくんだ部分にくぼみが残ります。一方、非圧痕性浮腫では、押してもくぼみができないのが特徴です。どちらのタイプであっても、腎臓の状態を調べるために早めの診察が必要です。

尿の色が変わった

尿の色や量が変わった場合、腎臓病のサインかもしれません。

尿の色は、体の健康状態を教えてくれる重要なサインです。腎臓は、血液の中から老廃物や余分な水分を取り除き、尿を作ります。腎臓の働きが低下すると、尿の色や量が変わることがありますが、薬や食べ物の影響で変わることもあるので、注意が必要です。

尿が濃い黄色になる場合

尿が黄色いのは、「ウロビリン」という物質が含まれているからです。これは、赤血球が壊れた後に作られる物質で、尿に含まれます。脱水が原因で尿が濃い黄色になることがあります。水分が不足すると、腎臓が水を節約して尿を濃縮するため、尿が濃くなります。これは腎臓が正常に働いている証拠ですが、体に負担がかかるので、水分補給が大切です。
尿が透明に近くなる場合
大量に水分を摂ったり、アルコールを飲むと、尿が薄く透明に近くなります。これは、腎臓が余分な水分を体から出しているためです。ただし、腎臓の働きが悪くなると、尿をうまく濃縮できず、尿が薄くなります。腎機能が低下すると、夜間に頻繁にトイレに行くことが増えることもあります。

尿が赤くなる場合(血尿)

尿に血が混じると、ピンク色や赤色になります。これは腎臓や膀胱に問題がある可能性を示しています。腎結石や腎炎、腫瘍などが原因になることが多いです。血尿が見られた場合は、早めに泌尿器科で検査を受ける必要があります。
尿がオレンジ色や茶褐色になる場合
肝臓の病気や貧血によって、尿がオレンジ色や茶褐色になることがあります。これは「ビリルビン」という物質が尿に増えるためで、特に肝臓が悪い場合は目や皮膚が黄色くなる黄疸も見られることがあります。

尿が紫色になる場合

尿道カテーテルを使っている方で、特定の細菌によって尿が紫色になることがあります。この場合、細菌が尿中の物質を分解して色素を作り、それが尿に現れるためです。

尿が黒くなる場合

パーキンソン病の治療薬「レボドパ」などの薬が原因で、尿が黒くなることがあります。お薬を確認して、心配な場合は医師に相談しましょう。

尿の量が変わった

尿量の変化は、腎臓の機能を知る重要な指標です。

腎臓は体内の水分バランスを調整し、余分な水分を尿として排出します。しかし、腎臓の機能が低下すると、この調整がうまくできなくなり、尿量が変化することがあります。

無尿(むにょう)

定義: 1日の尿量が100mL以下の状態を無尿といいます。これは、ほとんど尿が出なくなる状態です。無尿は、急性腎不全、重度の腎機能障害、腎血流の著しい低下、尿路閉塞などが原因となります。これらの状態では、腎臓が尿を作ることができなくなります。

乏尿(ぼうにょう)

定義: 1日の尿量が400mL未満の状態を乏尿といいます。乏尿は、脱水、腎不全、心不全などが原因で起こります。腎臓が十分な尿を作れない、または体が水分を保持しようとして尿量が減少する状態です。

多尿(たにょう)

定義: 1日の尿量が2500mL以上の場合を多尿といいます。
多尿は、糖尿病、尿崩症、慢性腎臓病の初期段階、または大量の水分摂取などによって起こります。腎臓が過剰に尿を排出してしまう状態や、体内で水分をうまく保持できない状態です。

慢性腎臓病(CKD)と尿量の変化

慢性腎臓病(CKD)では、腎機能が徐々に低下し、尿を濃縮したり希釈したりする能力が失われていきます。通常、腎臓は体の水分状態に応じて尿の濃さや量を調整しますが、CKDが進行すると、この調整がうまくできなくなり、尿は体液と同じ濃度(等張尿)になりやすくなります。
健康な人では、昼間に尿量が多く、夜間は尿量が少なくなるのが一般的です。しかし、CKDが進行すると、腎臓が尿をうまく濃縮できなくなり、昼と夜の尿量に差がなくなります。結果として、夜間にトイレに行く回数が増える(夜間尿)ことが起こりやすくなります。これは、腎機能が低下しているサインの一つです。

たんぱく尿を指摘された

健康診断や検査で蛋白尿を指摘された場合、その重要性が分からず、受診を先延ばしにしてしまう方もいらっしゃるかもしれません。タンパク尿は、腎臓の機能が低下しているサインであり、放置すると慢性腎臓病や、さらには末期腎不全(透析治療が必要な状態)へ進行する恐れがあります。そのため、早めの対応が非常に重要です。
尿検査は、針を使わない簡単で負担の少ない検査であり、腎臓の状態を把握するために非常に有用です。軽度の蛋白尿では自覚症状がないことが多いため、健康診断で指摘された時点で病院を受診することが大切です。高度なタンパク尿の場合は、尿の泡立ちなどの自覚症状が現れることがありますが、軽度の段階では検査なしでは気づきにくいのが実情です。
タンパク尿が見られる原因には、糖尿病や高血圧といった慢性疾患が代表的ですが、他にも一過性のタンパク尿や腎臓以外の疾患(血液疾患など)も考えられます。さらに、ステロイド治療が必要な疾患など、治療の介入が必要なケースもあるため、原因の特定には専門医の診察が欠かせません。
タンパク尿はそのままにしておくと腎機能障害が進行し、末期腎不全に至るリスクが高まります。しかし、適切な治療を早期に開始することで、腎機能の低下を抑え、進行を遅らせることが可能です。当院では、タンパク尿の原因を精査し、腎臓の健康を守るための最適な治療を提供しています。
タンパク尿を指摘された方や、腎臓の健康に不安がある方は、ぜひお早めに当院にご相談ください。

クレアチニンが高いと指摘された

クレアチニンは、筋肉が活動する際に作られる老廃物であり、腎臓が血液からろ過して尿として排出します。血液中のクレアチニン値は、腎臓の機能を反映する重要な指標です。通常、腎臓が正常に機能している場合、クレアチニン値は安定していますが、腎機能が低下すると血液中にクレアチニンが蓄積し、値が高くなることがあります。これは、腎臓が十分に働いていない可能性を示しているため、注意が必要です。
しかし、クレアチニン値は性別や体格、筋肉量によっても変動します。たとえば、筋肉量が多い人はクレアチニン値が高くなることがあり、この場合、腎機能が低下しているわけではありません。反対に、筋肉量が少ない人ではクレアチニン値が低く出ることがあるため、クレアチニンだけで腎機能を評価することには限界があります。このような場合、シスタチンCという検査が役立ちます。シスタチンCは筋肉量の影響を受けにくく、腎機能をより正確に評価できるため、特に筋肉量が通常より多い、または少ない方には推奨されます。
さらに、クレアチニン値は腎機能の変化に遅れて反映されるため、検査結果を一度だけ見るのではなく、推移を継続的に観察することが重要です。腎機能が徐々に低下している場合、定期的な検査を通じてクレアチニン値の変化を確認し、腎臓の状態を正確に把握することが求められます。健診でクレアチニンが高いと指摘された際には、腎臓内科を受診し、適切な評価を受けることが大切です。シスタチンC検査の追加も対応させて頂きます。

尿潜血が陽性になった

健康診断や検査で尿潜血の陽性を指摘されても、自覚症状がないため受診をためらう方が多いかもしれません。尿潜血とは、目には見えない微量の血液が尿に混じっている状態です。その原因は多岐にわたり、慎重な評価が必要です。
尿潜血の原因で最も多いのは、泌尿器科疾患です。具体的には、尿路結石や尿路系の癌、尿路感染症などが考えられます。これらは泌尿器科での精査が重要となるため、尿潜血を指摘された場合、まず泌尿器科の受診をお勧めするのが一般的です。特に、肉眼で見える赤い尿(肉眼的血尿)が出た場合は、多くの方が早めに受診しますが、尿潜血のように自覚症状がないケースでは受診をためらいがちです。
しかし、尿潜血が見つかった場合は、軽視せず適切な検査を行うことが大切です。まれに重大な病気が隠れていることもあり、癌が発見されるケースも少なくありません。リスクの高い方には、尿沈渣検査(尿中の沈殿物を顕微鏡で観察する検査)や尿細胞診(尿中の癌細胞の有無を調べる検査)、超音波検査(腎臓や泌尿器系の形態異常を調べる画像検査)など、さらなる精査が必要です。
また、尿潜血に加えてタンパク尿がある場合は、糸球体腎炎などの腎臓内科疾患の可能性が考えられます。糸球体腎炎は、腎臓の機能が低下する病気で、放置すると末期腎不全(透析治療が必要な状態)に進行する恐れがあります。この場合、腎生検などの詳しい検査が必要となります。

よくある腎臓の疾患

糖尿病性腎症・糖尿病関連腎症 (DKD)

糖尿病関連腎臓病(DKD)とは、糖尿病が長く続くことで腎臓がダメージを受ける状態のことです。かつては、腎臓の働きが過剰になり、尿中にアルブミン(タンパクの一種)が少しずつ出るようになり、最終的には腎臓の機能が低下して腎不全に至るという流れが典型的でした。
しかし、最近では、こうした典型的なパターンに当てはまらないケースも増えてきました。たとえば、尿にタンパクが出ないにもかかわらず腎臓の機能が低下する場合があります。これは糖尿病治療の進歩や患者さんの高齢化が影響していると考えられています。このような背景から、「糖尿病関連腎臓病(DKD)」という新しい言葉が使われるようになりました。

糖尿病関連腎臓病(DKD)の診断基準

CKDの基準を満たし、さらに、糖尿病が原因と考えられる場合「糖尿病関連腎臓病(DKD)」と診断されます。特に、糖尿病を発症して10年以上が経過し、アルブミン尿が増え続けたり、糖尿病網膜症がみられる場合は、典型的なDKDとされます。

糖尿病性腎症の変化

以前は、糖尿病性腎症が進行すると、ネフローゼ症候群(大量のタンパクが尿に出る状態)を引き起こし、その後急激に腎機能が低下することが一般的でした。しかし、現在はアルブミン尿を減らす治療法が進歩していること、また高齢化に伴いアルブミン尿が増えないまま腎機能が低下するケースも増えています。

糖尿病関連腎臓病(DKD)の治療について

糖尿病による腎臓のダメージを防ぎ、健康を維持するためには、血糖値だけでなく、肥満、高血圧、コレステロール、喫煙といった他のリスク要因も含めて総合的に管理することが重要です。このような治療法を「集約的治療」と呼び、健康悪化に関わるリスクを総合的に減らすことが確認されています。
軽度の腎臓病(微量アルブミン尿)の進行を防ぐことにも、集約的治療が効果的です。特に、血糖と血圧の管理に加え、RA系阻害薬と呼ばれる薬の使用が推奨されます。
また、腎臓だけでなく、心筋梗塞や脳卒中などの心臓病や血管病のリスクも集約的治療によって低減できることが示されています。さらに、長期間にわたる観察研究では、心臓病リスクだけでなく、死亡リスクも減少することが分かっています。そのため、早期から集約的治療を始めることが望ましいとされています。

治療の目標

糖尿病患者さんの腎臓を守るためには、次の管理目標を目指すことが推奨されています。

  • 血糖(HbA1c 7.0 %未満)
  • 血圧(上の血圧130 mmHg未満、下の血圧80 mmHg未満)
  • 血清脂質(LDLコレステロール120 mg/dL未満、HDLコレステロール40 mg/dL以上、中性脂肪150 mg/dL未満)
これらの目標を達成するためには、複数の薬を使うことがあり、副作用(低血糖、過度な血圧低下、むくみ、高カリウム血症など)に注意が必要です。そのため、定期的に体調や検査データをモニタリングし、個々に合わせた治療目標を設定することが大切です。
治療選択肢

SGLT2阻害薬やフィネレノンなど、2型糖尿病に伴う慢性腎臓病に対する治療薬が登場し、治療の選択肢が広がっています。

慢性糸球体腎炎

腎臓には「糸球体」というフィルターの役割を果たす部分があり、この部分が炎症を起こして尿にタンパクや血液が混じる病気を「糸球体腎炎」といいます。中でも、タンパク尿や血尿が1年以上続くものを「慢性糸球体腎炎(慢性腎炎)」と呼び、腎臓病の中でも特に多く見られる病気です。腎機能が徐々に低下し、最終的には腎不全に進行するリスクもあります。
その中でも、特に頻度の高い病気が「IgA腎症」です。ここでは、IgA腎症について詳しく説明します。

IgA腎症とは?

発症率と患者数

IgA腎症は、IgAという免疫グロブリンが腎臓の糸球体に沈着し、腎臓に炎症を引き起こす病気です。日本では腎生検によって診断され、腎生検を受けた患者さんの約3分の1がIgA腎症と診断されています。発症率は地域や国によって異なりますが、日本では特に高い傾向があります。発症のピークは30〜39歳で、10代から50代まで幅広い年齢層に見られます。

経過と腎臓への影響

IgA腎症の進行は一般的に緩やかですが、早期発見と治療が行われないと、腎臓の機能が徐々に低下し、最終的に腎不全に至ることがあります。日本での調査によると、10年後の腎臓生存率は87.5%、20年後は72.6%と報告されています。しかし、症状の進行速度は人によって異なり、適切な治療を受けることで腎機能の低下を抑えることができます。

IgA腎症の治療方法

1. 血圧とタンパク尿の管理

IgA腎症では、血圧が高い、または尿に大量のタンパクが含まれる場合、腎機能の悪化が早まる可能性があります。したがって、血圧のコントロールと尿中のタンパク量を減らすことが治療の基本となります。ACE阻害薬やARBなどのRA系阻害薬は、腎機能の低下を抑え、末期腎不全への進行を遅らせる効果があるため、IgA腎症の治療において推奨されています。

2. 副腎皮質ステロイド薬の使用

尿タンパクの量が多い場合、腎臓の炎症を抑えるために副腎皮質ステロイド薬を使用することがあります。この薬は腎機能の悪化を防ぐ効果がありますが、感染症や糖尿病などの副作用に注意が必要です。最近では、ステロイドの投与量を減らし、副作用を抑えながら効果を得られる治療法も開発されています。

3. 口蓋扁桃摘出術とステロイド併用療法

日本では、口蓋扁桃(扁桃腺)を摘出する手術とステロイドを併用する治療が効果的であると報告されています。この治療法は、尿中のタンパクや血尿の量を減少させ、腎機能の低下を抑える可能性があります。ただし、治療の効果には個人差があるため、病状に応じた判断が必要です。

4. 食事療法と生活習慣の改善

食事療法としては、塩分やタンパク質の摂取を控えることが推奨されます。また、肥満防止や禁煙、飲酒の節制など生活習慣の改善も腎臓を守るために重要です。

5. 新しい治療法

最近、SGLT2阻害薬という新しい薬が慢性腎臓病(CKD)の治療に効果的であると注目されています。さらに、分子標的薬を含む国際的な研究が進行中で、IgA腎症の治療法は今後さらに広がっていく可能性があります。

尿潜血を指摘された  IgA腎症を考慮した早期診断の重要性

健康診断や検査で「尿潜血」を指摘されても、自覚症状がないため、受診をためらう方が多いかもしれません。しかし、尿潜血はIgA腎症の早期発見における重要な手がかりとなることがあります。尿潜血とは、目に見えない微量の血液が尿に混じっている状態であり、腎臓のフィルター部分である糸球体に炎症が生じた結果、引き起こされることが多いです。

尿タンパクを指摘された  IgA腎症の進行を防ぐために

「尿タンパク」が指摘された場合、IgA腎症を含む糸球体腎炎の可能性が考えられます。タンパク尿は、腎臓のフィルター機能が損なわれ、血液中のタンパク質が尿に漏れ出している状態を示します。IgA腎症では、尿潜血とともに持続的なタンパク尿がよく見られ、これは腎機能の低下を示す重要なサインです。特に高度なタンパク尿が続くIgA腎症は、予後が悪く、積極的な治療が必要となることが多いです。

早期診断と治療の重要性

私の経験では、尿潜血やタンパク尿を指摘され、その後の精査でIgA腎症と診断され、治療を開始した方が多くいらっしゃいます。一方で、治療が遅れた結果、末期腎不全に至り、透析治療が必要となった患者さんも見てきました。特に若い方は、仕事が忙しかったり自覚症状がなかったりするため、受診が遅れることも少なくありません。
IgA腎症は放置すると腎機能が低下し、最終的には腎不全に進行するリスクがあります。早期の診断と適切な治療を受けることで、病気の進行を抑え、健康な生活を続けることが可能です。食事や生活習慣の改善を含めた治療を行うことで、より良い予後が期待できます。

腎硬化症

腎硬化症は、長期間にわたる高血圧が原因で腎臓がダメージを受け、機能が低下する病気です。特に高齢者に多く、透析治療を受けている原因の一つでもあります。この病気は自覚症状がほとんどなく、ゆっくりと進行するため、早期発見と治療が非常に重要です。
腎硬化症と高血圧の関係
腎硬化症は、長期間の高血圧によって腎臓の細かい血管が硬くなり、腎臓のフィルター機能が低下することから始まります。腎臓は血液をろ過して老廃物を排出する役割がありますが、高血圧が続くとそのフィルターが傷つき、徐々に腎機能が低下していきます。

腎硬化症の診断

腎硬化症は、通常、血圧が高い状態が続き、尿検査で大きな異常が見られない場合に診断されます。例えば、尿に血が混ざっていなかったり、尿タンパクの量が少なかったりすることが多いですが、場合によっては尿タンパクが多く出ることもあります。また、糖尿病や他の腎臓の病気が原因でないことを確認してから診断されることが一般的です。

腎硬化症の進行と症状

腎硬化症の怖いところは、進行しても自覚症状がほとんどないことです。そのため、定期的な健康診断や血圧の管理が非常に重要です。特に、血圧が高いまま放置すると腎機能が悪化し、最終的には透析が必要になることもあります。

治療と予防

腎硬化症の治療では、血圧をしっかりコントロールすることが最も大切です。適切な血圧管理は腎臓の負担を軽減し、進行を遅らせる効果があります。また、腎硬化症は腎臓だけでなく、心臓や脳など他の臓器にも影響を及ぼす可能性があるため、全身の健康を考えた治療が必要です。
日常生活では、塩分を控えた食事や適度な運動、禁煙、ストレス管理が腎硬化症の予防に役立ちます。これらの習慣を心がけることで、血圧のコントロールがしやすくなります。
腎硬化症は、放置すると腎不全に進行するリスクがありますが、早期の診断と適切な治療で進行を防ぐことができます。日々の健康管理と定期的な検診を忘れず、血圧や体の変化に注意しましょう。

多発性嚢胞腎

多発性嚢胞腎(ADPKD)は、腎臓に多数の嚢胞(袋状の構造)ができる遺伝性の病気で、進行すると腎臓の機能が低下します。日本では、700~1,400人に1人がこの病気を持つとされ、患者さんの半数は60歳までに末期腎不全に至ることがあります。ADPKDの症状としては、高血圧、肝嚢胞、脳動脈瘤などが合併しやすく、注意が必要です。

症状と診断方法

ADPKDは初期には自覚症状が少なく、健康診断や人間ドックで偶然発見されることが多いです。腹部の超音波検査やCT、MRIで腎臓や肝臓に複数の嚢胞が確認された場合は、精密検査が必要です。また、高血圧や腹痛、背中の痛み、腹部膨満感、血尿などの症状が現れることもあります。腎機能に異常がない場合でも、画像検査で嚢胞が確認された際には、病院を受診しましょう。

腎臓専門医への紹介基準

ADPKDは進行性の病気で、いずれ腎臓専門医による診療が必要となることが多いです。以下のような場合は、早めに専門医を受診することが勧められます。

  1. 診断が不明確な場合 嚢胞の数が少ない、または腎臓が腫大していない場合など、診断に迷うとき。
  2. 進行が予測される場合 両側腎臓の総容積(TKV)が増大し、将来的に腎機能の低下が予測される患者さんには、早期治療が重要です。
  3. トルバプタン治療が適応される場合 腎臓の容積が750mL以上で、年間増大率が5%以上、かつ腎機能が一定以上(eGFRが15mL/分/1.73m²以上)ある場合は、トルバプタン治療が考慮されます。
  4.  嚢胞の感染や出血がある場合 発熱や持続する炎症(CRPの上昇)、肉眼的血尿、貧血などが見られる場合は、迅速な診療が必要です。

トルバプタンの役割

トルバプタンは、腎臓の嚢胞の増大を抑制し、腎機能の低下を遅らせる薬です。日本では2014年にADPKD治療薬として承認されており、特に腎機能が残っている早期段階での使用が効果的です。これにより末期腎不全に至る期間を延長できる可能性があります。ただし、副作用として多尿や口渇、肝機能障害が報告されており、定期的な検査が必要です。

高血圧と降圧治療

ADPKD患者の多くは高血圧を伴い、腎機能の低下や心臓への負担が懸念されます。ACE阻害薬やARBなどの降圧薬が一般的に使用され、血圧を140/90 mmHg未満(蛋白尿がある場合は130/80 mmHg未満)に保つことが推奨されます。特に50歳未満で腎機能が保たれている患者には、さらに厳しい血圧管理が提案されています。

ADPKDは進行性で、腎機能が低下し末期腎不全に至ることがあります。早期の診断と適切な治療が病気の進行を遅らせるために重要です。高血圧の管理やトルバプタン治療など、腎臓専門医の診察が欠かせません。日常生活では、定期的な健康診断や血圧管理を心がけ、病気の進行を予防しましょう。

ネフローゼ症候群

ネフローゼ症候群は、腎臓の糸球体にあるフィルター機能の障害によって、大量のタンパク質が尿中に漏れ出し、血液中のタンパク質(アルブミン)が低下する病態です。この病気は、身体にさまざまな症状や合併症を引き起こすため、早期の診断と適切な治療が重要です。

ネフローゼ症候群の特徴

  • 尿タンパクの大量漏出:1日に3.5g以上のタンパク質が尿中に排泄されます。
  • 低アルブミン血症:血中アルブミンが3.0g/dL以下に低下します。
  • 浮腫:タンパク質の低下により、体内の水分バランスが崩れ、顔や手足にむくみが出ることがあります。
  • 脂質異常症:コレステロールや中性脂肪が上昇することが多く、動脈硬化のリスクが増します。

ネフローゼ症候群の分類

 一次性ネフローゼ症候群

一次性(原発性)ネフローゼ症候群は、特定の原因疾患がない場合を指します。このタイプは、腎臓自体の問題が主な原因となり、主な疾患を以下に示します。

  • 微小変化型ネフローゼ症候群(MCNS):小児に多く、急性発症しやすい。腎生検を行い顕微鏡で腎臓組織を調べても、明らかな異常が見られないのが特徴です。
  • 巣状分節性糸球体硬化症(FSGS):糸球体の一部に硬化が生じる病気です。治療に難渋することがあります。
  •  膜性腎症(MN):中高年に多い疾患で、緩徐に進行します。慢性疾患の中でも、自己免疫反応が関与しているとされています。
 二次性ネフローゼ症候群

二次性ネフローゼ症候群は、他の病気が原因で発症します。以下の疾患がよく知られています。

  • 糖尿病性腎症:糖尿病の進行によって腎臓の機能が低下し、ネフローゼ症候群を引き起こします。
  • 全身性エリテマトーデス(SLE):自己免疫疾患で、腎臓を含む複数の臓器に炎症を引き起こします(ループス腎炎)。
  •  アミロイド腎症:アミロイドという異常タンパク質が腎臓に蓄積し、機能を障害します。

合併症と病態

ネフローゼ症候群は、以下のような合併症を引き起こす可能性があります。
  • 腎機能障害:急性腎障害(AKI)を併発することがあり、慢性腎臓病(CKD)に移行され最終的には末期腎不全に至るリスクがあります。
  • 浮腫:血中アルブミンの低下により、体内の水分が血管外に漏れ出し、顔や足がむくみます。
  • 血栓症:血中のタンパク質が不足すると、血液が凝固しやすくなり、深部静脈血栓症や肺塞栓症を引き起こすことがあります。
  • 感染症リスク:免疫力が低下するため、細菌やウイルスによる感染症にかかりやすくなります。

診断と治療

ネフローゼ症候群の診断は、血液検査や尿検査、腎生検などを通じて行われます。特に、尿中の大量のタンパク質漏出と血中のアルブミンの低下が重要な診断基準です。これに加えて、腎臓の機能や構造の詳細を確認するために腎生検が行われることもあります。
治療については、まず原因に応じたアプローチが取られます。一次性ネフローゼ症候群の場合、ステロイドや免疫抑制薬が主に使用され、免疫系の過剰反応を抑えることが目的です。一方、二次性ネフローゼ症候群では、糖尿病や全身性エリテマトーデス(SLE)などの原疾患の治療が優先されます。また、症状をコントロールするために血圧や浮腫の管理が必要です。食塩制限を行い、利尿薬を使用することで体内の余分な水分を排出し、むくみを軽減しつつ、血圧を安定させます。
さらに、ネフローゼ症候群の患者は感染症にかかりやすくなるため、感染予防も重要です。免疫力が低下しているため、定期的なワクチン接種や必要に応じた抗菌薬の使用が推奨されます。
日常生活においても、ネフローゼ症候群の管理は欠かせません。食塩の摂取を1日6g以下に抑えることで、浮腫を防ぎ、血圧の上昇を防止します。また、タンパク質の摂取量にも注意が必要で、過剰摂取は腎臓に負担をかける可能性があるため、適切な量を摂取することが求められます。定期的な検査を通じて、病状を管理し合併症を予防することが大切です。